SBI損保とあいおいニッセイ同和との疎遠

昨日…いや正確には今日ですか−のブログで日本震災パートナーズ株式会社の話を書いたのですが、もう少し情報がないかなと思ってSBIホールディングス株式会社のサイトをいろいろ見ていたら、違うネタがありましたので、今回はそのことを書きます。
 
一応、前提となる予備知識の整理をしておきます。(私も何年かすると忘れてしまうかもしれませんし。)
SBIHDには、SBI損害保険株式会社という損保会社があります。
このSBI損保は、SBIHDとあいおいニッセイ同和損害保険株式会社の合弁により設立された損保会社で、SBI損保に関する最初のプレスリリース資料には以下のように書かれています。
「損害保険会社の設立についての共同検討・準備開始のお知らせ」
http://www.sbigroup.co.jp/news/2006/0327_746.html
SBIホールディングス株式会社 ニュース 2006.3.27)

このような共通認識のもと、SBIホールディングスあいおい損保と、SBIホールディングスおよびそのグループ会社が展開する多様なインターネット金融サービスのビジネスノウハウやマーケティングチャネルと、あいおい損保保有する損保経営、商品開発等の経験・ノウハウや運営インフラ等のリソースを活用し、多様化するマーケットニーズへの対応と、より幅広い顧客層および収益基盤の開拓を実現する新損保会社の設立に向け、共同準備を開始いたします。
このたび設立を目指す新損保会社では、オンライン証券最大手のイー・トレード証券株式会社や住宅ローンを提供するSBIモーゲージ等をはじめとするSBIグループ各社のインターネット金融サービスとのシナジーを最大限追求し、SBIブランドを活用しながらインターネットのマーケティングチャネルを通じた効率的な損害保険事業を推進していく予定です。
また、保険事業の展開に必要な事務・システム、コールセンター、損害サービス体制等のインフラや商品開発業務等については、あいおい損保が支援することにより、速やかな事業立ち上げと効率的な業務展開を図ります。

つまり、営業部分に関してはSBIのリソースを使って売ることとしてSBIHDが担当し、本社業務・損調部分についてはあいおい損保が担当するということのようです。
そして、2007年12月26日に損害保険業免許の認可を取得した際のプレスリリースに記載されている株主構成とその割合は以下のとおりです。

SBIホールディングス株式会社 61.60%
あいおい損害保険株式会社 33.40%
ソフトバンク株式会社 5.00%

 
ここからが本題です。今回私が目にした冒頭に書いた違うネタとは、コレの49ページ目の「早期の黒字化と将来利益の拡大を目指しあいおいニッセイ同和損保への再保険契約および業務委託契約を終了」です。
「2012年3月期 SBIホールディングス株式会社 決算説明会」
http://www.sbigroup.co.jp/investors/library/presentation/pdf/presen120426.pdf
SBIホールディングス株式会社 株主・投資家の皆様へ > 決算情報 > SBIホールディングス
内容は以下の2つです。

再保険契約の終了
当初、創業期の引受リスクヘッジ及び資本負担の軽減を主たる目的として実施していたが、契約数が伸びSBI損保単独で引受リスクがとれるようになり、2011年3月末であいおいニッセイ同和損保に対する再保険の新規拠出を終了
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粗利の拡大が見込まれる

これは文章だけを見るとピンときませんが、SBI損保ディスクロージャーから推測すると財務面で相当インパクトがある内容かと思います。SBI損保の2010年度の元受正味保険料は10,069百万円・正味収入保険料は3,031百万円です。こんなに正味収入保険料が少ないのは7割程度をあいおいニッセイ同和にQ/Sで出再しているからです。それはディスクロージャーP.48の(損益計算書の注記)05を見れば明らかです。
つまり、SBI損保はとった保険料の3割+再保険手数料分しか手元に残らないということになります。それはこの再保険契約がなくなれば、それだけで正味収入保険料は激増します。当然にオフィス代や人件費などの固定費はかかるわけですから、この再保険契約がない方が早く損益分岐点に到達できるであろうことは分かります。

業務委託契約の終了
2011年度以降のあいおいニッセイ同和損保に対する業務委託契約を終了し、コールセンターの運営等を自社化
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業務委託費として収入保険料に一定比率をかけたものを支払う契約であったが、解除・自社化によりかかる費用の逓減が可能になる

これもディスクロージャーP.48の(損益計算書の注記)05を見ると何となく分かります。CSデスク株式会社というのがあり、そこに818百万円支払っています。CSデスクは、損害保険事務の受託、システム・コールセンター等の開発・保守・管理業務を主な業務としているあいおいニッセイ同和の子会社です。
正味収入保険料 3,031百万円に対して、818百万円というのは相当大きい額です。保険料比例で多額の業務委託費を払っていたら、それは黒字化を困難にする要因になるだろうことは分かります。SBI損保は保険料で勝負しているところがあるので、尚更でしょう。
 
他にも、あいおいニッセイ同和との関係が薄れていることを示すものに出資比率があります。2012年3月30日時点の出資比率は以下のとおりです。
あいおいニッセイ同和の比率がかなり減っています。保有が増えるについて資本金を増やす必要があるのでSBI損保は増資をしているようですが、その増資にあいおいニッセイ同和はSBIHDよりも低い割合での対応としているのでしょう。

SBIホールディングス株式会社 85.5%
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 14.1%
ソフトバンク株式会社 0.4%

 
再保険契約と業務委託契約の終了は、いずれも筋の通っている判断のような気がします。
ひとつ理解し難いのは、何故こんな契約をあいおい損保としてしまったのかということです。あいおい損保と合弁で設立したけど、結局は廃業したアドリック損害保険株式会社のこともあって、ひょっとして両社ともあいおい損保に騙されたのではないかと勘ぐってしまいます。